2021塾全協新聞

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以下、一部抜粋


コロナ後の世界

NPO塾全協 全国会長 沼田広慶 (千葉県松戸市 北辰館スクール)

 

コロナ禍は緊急事態であり、国家間の戦争とは違いますが、まぎれもなく有事です。しかし、日本は
戦後今に至るまで、有事への準備をして来ませんでした。国民も政治家も平和を叫ぶばかりで有事への
備えを看過してきたのです。いや、否定してきたと言っていいでしょう。今回の無様な後手後手の、
しかも中途半端な対応はその付けが回ってきたものだと言っても過言ではありません。一定の評価を
認めないわけではありませんが、お粗末です。私権の制限は有事に際しては当然のことであり、論を
俟ちません。早期において短期間の厳重なロックダウンを実施すべきでした。今後は将来を考えて
私権の制限を含む緊急事態法の整備をしておく必要があるでしょう。と申しましても、今回のコロナは
いずれ収束します。犠牲者は出ますが世界人口の大幅な減少とまではいかないでしょう。問題はコロナ後
です。
私の塾は小さな個人塾であり、金もない貧乏塾です。それでも昨年の3月にはZOOMを使ってのオンライン授業を実施しました。塾生の一人ひとりに対してはアクリル板を設置し、消毒を含め、万全の対応を
とりました。新たにパソコンを購入したり、内蔵カメラだけではなく、広角レンズのカメラも導入したり
しました。資本力のある塾や一般の会社はさらにレベルの高い対応をしていると思います。こうした流れは
最早止められません。
教科書や参考書のデジタル化は確実に進むでしょう。塾教材も例外ではありません。ことの賛否の問題ではないのです。世の中の流れです。ガス灯が立てられ、鉄道馬車が走り、蒸気機関車が煙を吐き出して疾走した時代に、蠟燭の光がいい、自分の足で歩いたほうが旅の情緒を感じるなどと言っても始まりません。
意味がない訳ではありませんが、大勢は決しているのです。私は個人的に歩く旅が好きですが、新幹線も
飛行機も利用しています。
コロナ後に関わる話は山ほどありますが、ここでは我々塾に絞ってみましょう。その前提としてまずは
学校の変容を考えなければなりません。学校が変われば一般的に言って塾も変わらざるを得ないからです。
経産省のいう「未来の教室」は机上の空論に近いところもあり、すぐには実現できないでしょう。しかし、
近いうちにはデジタル教材やインターネットを使っての授業が日常的になり、従来学校では難しいとされてきた個別指導も充実したものになるでしょう。プログラミング教育も同様です。AIの発達はさらにそれらを加速させるはずです。
さて、ここで塾のこれからですが、オンライン授業は間違いなく拡充されるでしょう。子どもたちや保護者もそれを望む者が多くなるのではないでしょうか。通塾とオンラインとの割合がいずれ逆転する日も間近いと思われます。異論もありましょうが、塾としては両面への充実した対応が求められているのは確かでしょう。さらに、表面的な対応だけでなく、従来以上に1人ひとりへのきめ細かな対応が要求されるでしょう。
学校の個別指導も充実したものになるでしょう。プログラミング教育も同様です。AIの発達はさらにそれらを加速させるはずです。
AIの活用が次の決め手となると思われます。子どもたちの法的に可能な限りの情報を収集してインプットし、AI搭載ロボット講師の指導の質を高め、さらには経験値を積んだ人間講師との連携こそが塾の
勝敗を決めることになるでしょう。勝敗といいましたが、この流れに乗れない塾は文字通り滅び去る運命
にあります。カリスマ講師による一斉授業は残ると思いますが、例外的なものになるでしょう。いや、カリスマ講師はすでにとっくの昔からネット配信による授業を実施しています。カリスマでなくてもAIとタッグを組んでの授業をネット配信し、全国エリアで塾生を確保するような個人塾も出現するかもしれません。
AIの発達は能力不足の講師をお払い箱にするでしょう。
一般的に家庭でのネット授業は余程のモチベーションを持たないと継続が難しいとされています。しかし、
ネットによる授業は日進月歩の世界です。教材自体が飽きさせないように工夫されるでしょうし、横の
生徒同士のつながりもうまく利用しモチベーションの持続を図るようになるでしょう。全国エリアで実施
するならば、横のつながりも全国的なものになり、モチベーションは上がるのではないでしょうか。拡充と
進化を続けるネット授業がこれからの塾の生き残りをかけた激しい競争の場となることは想像に難くありません。
全国エリアと言いましたが、人口の一極集中も見直さざるを得ないでしょう。地震への対応も含めて、
企業も政府機関も学校も地方への分散を目指すようになるのではないでしょうか。首都圏に集中してきた塾も地方への分散が始まるかも知れません。各地の既存塾との競争も熾烈なものとなるでしょう。
塾教材にも言及したいと思います。AIの活用によって独自の教材を作る塾が多くなるでしょう。大手塾は昔から授業だけではなく、独自の教材でも勝負してきました。しかし、これからは中小塾や個人塾もAIを駆使して、独自教材を武器として前面に押し出して来るところが現れるでしょう。
問題はAIを活用できる人材の確保です。スマートフォンも満足に使いこなせないような私ではとても太刀打ちできません。私は絶滅危惧種どころか既に絶滅種なのかもしれません。最後の残光を放っているというべきでしょうか。救世主でも現れない限りわが塾の運命が変わることはないと思います。
しかし、塾をなくしてはいけません。民間こそが教育をリードしていくべきです。民間における自由な
教育こそが民主的で自由な市民社会を育て、支える柱となるのです。私は間もなく引退する身ですが、これからの塾人は塾を今まで以上に盛んにしなければならないと思います。塾は学校の影響を受けるというようなことを先に述べましたが、現状を踏まえての言であり、本意ではありません。官から民ではなく、民から官への流れを何としても築かなければなりません。教育は国家の基盤です。民の力こそ教育の要です。
コロナ後の世界こそ民間の教育力が問われています。日本の国力の増進も繫栄の維持も塾の存在をなくしては語れません。塾の益々の発展を祈念して新年度を迎えての所感としたいと思います。

 

 

コロナ対策に明け暮れた一年

NPO塾全協 東日本ブロック 理事長 内藤潤司 (埼玉県狭山市 ソロモン総合学院)

昨年の3月3日、全国展開している塾の本社会議室で、ある会議があり、私も末席に座っておりました。
その4日前の2月27日に、前総理大臣の安倍首相から全国の学校の休校宣言が発せられており、塾業界はどうするべきか、その対策に困惑しておりました。当初、経済産業省は、塾業界も2週間は休講して協力し、受講料のこともあり、その後は各塾の判断で対応してほしいと聞こえてまいりました。その会議が、終わっても各塾の休校宣言への対応に話題が集中しました。私にも質問が来て、「昨年の3月2日から、私たちの塾はすべてオンラインに切り替えました。」と答えると、皆さんとても驚かれておりました。九州で大きく展開しておられる塾長からは、そのソフト名を聞かれました。
休校宣言が発せられた2月27日から、それまでに経験したことのない多忙な、不安な戦いが始まりました。
臨時休校開始日の3月2日は、私たちの新学期開講の日でありました。担当者は、ほとんど眠らないで検討し、「このソフトで行けそうだ」ということになり、それから講師全員を指導して4日後の開講日を迎えました。「見えません」「声が聞こえません」「フリーズしております」という電話に対応する仕事も増え、担当者は大忙しでした。わずか4日の期間で、オンライン授業が始まったことに、保護者はとても好感してくれ、ある保護者からは「ソロモンはすごい」と絶賛されました。講師の先生方は、生徒のいない教室で、机に椅子を乗せ、そこにパソコンを置き、無人の授業が始まりました。この形式の授業が3月、4月、5月と
3か月続きました。各講座、個別指導ごとのidとパスワードの付箋が事務室の壁に貼られ、蝶々が群れを成して飛んでいるような光景は、今では懐かしく思い出されます。
6月になってから、対面授業に戻りました。そこからは、消毒との戦いでした。ソロモンは、かねがね
自習席が少ないのが、欠点でした。
自習したい生徒に十分に対応出来ていませんでした。そこで、このコロナ禍の中、自習室を別棟として建築することにしました。コロナで苦しんでいる人の多い中誤解のないように、「コロナ対策を兼ね、自習館建設中」という看板を出させていただきました。
完成は随分遅れましたが、この3月11日に一応完成いたしました。その間、4月17日には、血栓で妻が救急車で運ばれ入院するということもあり、2020年は忘れられない年になりそうです。

 

混乱の進学相談会は今年も続く

NPO塾全協 東日本ブロック 副理事長・進学対策部長
稲葉秀夫 (千葉県柏市 日本酒学通信社)

昨年、2月上旬にコロナ対策を考え新宿NSビル実施の進学相談会の要項をいつものように私立学校に
投函しました。この間に考えたのは入場者の減少でした。そのためLINEを利用した「つながる入試相談」を企画し相談回数を増やす対策を試みました。その後、コロナの猛威は激しさを増し、開催は困難ではないかと考えました。しかし私立学校からはすでに参加の回答が4月時点で9割来ていました。この状況下世間ではオンライン活用が話題になりつつありました。間に合うかわかりませんが自分の仕事はさておき急ぎ
知り合いのオンラインに詳しい方に相談しオンライン予約システムを教えていただきました。その時の
心配は利用者と私学の感触でした。そのため数日都内の私立学校に訪問し実施すべきかの判断を考えました。
おおむね意見は賛成でしたので塾全協の理事の皆さんにもご理解をいただきゴーサインとなりました。すでにこの時、私学の先生方からはいつもの対面式の相談会で了承を受けていました。ここからオンラインのシステム構築と私学の先生方にオンラインの変更をお願いしなくてはなりませんでした。再度350校近い私学に案内書を出し、すでに参加を表明されていいる私立の先生方には変更のお詫びと参加を呼び掛けることになりました。この時点で5月の連休が過ぎているころだと思います。その時「は!」と気付いたのは新宿NSビルの予約取り消しの件です。あわてて担当者に取り消しのお願いに行きました。通常なら250万円の50%125万円のキャンセル料がかかります。頭を下げ、当NPOの活動の意味と継続性について話しました。担当者の回答は当会だけを特別扱いにはできないが42回目の歴史の重みは考慮できますね。と言われました。2日後連絡があり次回の予約を入れることを条件に特別にキャンセル料なしとなりました。この時塾全協の過去の進学相談会担当者に感謝・感謝でした。このような例年にはない状況下ではありましたが何とか、
8月24日からのオンライン相談会予約に漕ぎつきました。
その後埼玉の予約開始の10月12日、またLINEのつながる入試相談終了12月20日まであっと言う間の1年が過ぎました。2021年の現在2月、私の中ではすでに2021年進学相談会の戦いが始まっています。コロナの本年9月時点での状況予測を踏まえて予算化しなくてはなりません。
今年は何が何でも対面式の相談会を実施するため利用者・私立学校・塾全協の方々にご迷惑のかからない方法を計画し実行いたします。コロナ禍ではありますが塾全協の中において新しい勉強をさせていただいた良い機会になりました。

 

コロナ禍の1年

NPO塾全協 東日本ブロック 事務国局長
中山和行(埼玉県比企郡 中山塾)

中山塾は埼玉東京の非常事態宣言を受けて4月14日から5月31日まで全ての授業をオンライン授業に切り替えました。ほとんどの方が使用しているズームではなく娘の詳しいMicrosoftのチームズを使って行いました。
4月11日にオンライン授業説明会をを実施し密を避けるために生徒本人のみで2回に分けて行いました。
心配していた通信環境はほとんどの家庭でクリアーしておりました。一件だけオンライン授業中は休塾というご家庭が出ました。このご家庭は6人兄弟でわさわさしていて家だと勉強にならないということでした。
実際にオンライン授業を行ってみての感想ですが、
①結構やれる。
②生徒の通信環境がまちまちで環境が悪いと画像が切れたり声が途切れたりする。
③何かと確認に時間がかかる。
④通常授業よりも生徒の理解を把握しづらいのでヘタをすると授業が進んでしまう。
⑤1対1の個別はほぼ対面授業と同じぐらいのクオリティが保てる
⑥1対2の個別授業はかなりやりづらい。
一方の子に説明をしている教師の声が他方の子にも丸聞こえなので
その都度生徒のスピーカーを切らせたりするのが大変。
⑦集団授業は各生徒の途中の様子がわからないので確認に苦労する。
⑧確認テスト自体がやりづらいしやった後のでき方を声で言ってもらうと他の生徒に分かってしまう。
個別チャットを使えばできるのだがやはり時間がかかる。

6月から対面の授業に戻しましたがその際、オンラインの希望もとったのですが結果としてはオンラインを選択する人はいませんでした。
夏期講習中に隣町の中学校で3年生と2年生で2人ずつ陽性者がでたのでその中学の通塾者3名は
1週間オンラインで授業を受けました。
受験生の夏期講習・冬期講習時に食事を塾では禁止しました。したがって、今までのように1日に長い時間、
授業を組むことができなかったことが残念でした。
2月に新年度に向けての保護者会を開くのですが今年は映像による保護者会にチャレンジしました。ズームによる双方向タイプではなく、あらかじめ撮影したものを都合のよいときに見てもらうスタイルにしました。

 

冷静かつ迅速な対応で、乗り越えよう。~もし講師がコロナ感染したら~

都の西北学院 北堀美知子 (東京都立川市)

 1月~2月にかけて発生したコロナ感染者に関する対応について、時系列でお伝えいたします。
1月13日(水)昼頃、発熱した講師より、陽性の知らせあり。
保健所に問い合わせて本人の聞き取り調査を待つように言われる。本人の了承を得て、全生徒にメールと
電話で周知。
13日~22日 1.個別生、中1・中2国語のみ休講。
2.アルバイト講師を総動員し、中1~中2数学、中3の5科はzoom授業で切り抜ける
1月14日(木)夕方、保健所による該当講師(以下Aと呼ぶ)の聞き取り調査により、家庭内感染と判明。
塾に濃厚接触者はいないとのこと。
12日~13日にAから指導を受けた数人の生徒保護者より、「学校に行って良いか」の問い合わせを受ける。→行ってよいと返答。
★立川7中副校長・武蔵村山5中副校長より、「感染者が出たことは、報告してくれなくては困る」と、
お叱りを受ける。
→厚生労働省のホームページより、濃厚接触者の定義(マスクなし・1メートル未満・15分以上の会話)を示し、当塾の授業はこれに当てはまらないことを伝え、納得していただいた。
13日~22日の平日、ほぼ毎日、Aの状況と、ご心配をおかけしているお詫びと、細かい授業の連絡を
メールで送り続けた。
1月19日(火)~25日(月)A入院 LINEで日々の体調を報告してもらった。この間、保護者よりAに対しての励まし、他の講師への心遣いが寄せられる一方、講師や、我が子の感染を過度に心配されている
親御さんもいた。
他の講師の検査を希望するような声も上がった。→私たちの安心のためにも、「抗原検査キット」を通信販売にて購入した。
1月18日(月)~20日(水)講師全員が検査し、陰性を確認。メールで塾生に報告。
1月23日(土)中3入試直前特訓と、中学受験の小6の対面授業再開。
1月25日(月)全生徒授業再開 緊急事態宣言中のため、引き続きzoomも併用
1月25日(月)A退院、1週間の自宅待機(29日まで)
1月29日(金)Aの希望、塾長の判断により、2月1日からの復帰を決定
1月30日~2月5日 A 事務仕事のみ復帰 微熱が出る日もあり。→抗原検査キットにて陰性を確認。
2月8日~ 授業全面復帰 1度だけ微熱が出るも、現在は、後遺症なく快癒。元気を取り戻している。

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