2020塾全協新聞

詳細はこちら(PDF)

 

民間教育自立論

NPO塾全協 全国会長 沼田広慶
(千葉県松戸市 北辰館スクール)

1808年、ナポレオン占領下のベルリンにおいて行われたフィヒテの講演「ドイツ国民に告ぐ」は公教育による国民改造を訴えました。ドイツの自由と独立の
ためには国民教育が必要とされたのです。当時の時代背景は現代の日本とは
全く違っていますが、国家存立の基盤が教育にあることに変わりはありません。ナポレオンを批判した著者不明の書物を出版した書店の経営者がナポレオン
の命によって銃殺された時代に、文字通り命がけで行った講演ですが、日本の
教育の現状を思うと、フィヒテのような強い信念と勇気をもって教育の改革を
訴える必要があるように思います。
大学入試改革の挫折と混迷はこの国の存立を根底から揺るがしかねない危機を
惹起せしめています。文部行政は国際化と高度情報化社会への対応に明らかな
後れを取っています。このまま八方ふさがりの状況が続けば、日本は将来の
国を背負う人材育成に失敗し、国家が政治的にも経済的にも社会的にも破綻する恐れがあります。国家安全保障の上からも重大な脅威です。すでに、この国の若者には看過できない兆候が表れています。「2019年版子ども・若者白書」
によれば、自己肯定感を持たない者が多いということです。これでは激烈な
国際競争社会において日本は押しつぶされる運命しか待っていません。まして、国際社会は不透明感を増しています。一方では共生と多様性が新しい
価値観として叫ばれていますが、地球の潮流は混とんとしています。
インターネットやAIの発達は高速な情報処理と地球規模の情報共有を実現して
いますが、技術情報の窃取という新たな情報戦争を引き起こしています。
クラウドや電子マネーの普及発展はさらなる危機を孕んでいます。一瞬にして
世界経済が崩壊するのです。まさに悪夢といえましょう。世界の富の偏在は
とっくに社会の安定維持の臨界点を超えています。難民問題も解決の道筋が
見えません。ネオナチズムが世界中に台頭しつつあり、再び全体主義が跋扈する世の中が軍靴の響きとともに近づいてくるのを感じているのは私だけでしょうか。米露INF全廃条約の失効は核戦争による人類滅亡への時計の針を確実に
進めています。香港の民主化を求める大規模デモは選挙で民主派を大勝させましたが、中国共産党の巻き返しが起こるのは火を見るよりも明らかでしょう。
温暖化現象が世界中に被害をもたらしている中で米国は「パリ協定」からの
離脱を国連に通告しました。国際協調は大国の国益追求の前に画餅に帰したのです。イギリスは本年1月末をもってEUを離脱しました。この影響は様々な意味において大きなものがあるでしょう。端的に言って、「共生」は世界の辞書には存在しないのです。宗教・民族問題も根が深く、「多様性」を目指す人類の
理想とはかけ離れた現実を見せています。平和の祭典オリパラに熱狂するのも
いいでしょう。しかし、この国の国民の大半はテレビやインターネットから
とめどもなく流れる低俗な情報に脳の中枢神経を麻痺させられています。
ヒトラー率いるナチスドイツでベルリンオリンピックが開催されたのは1936年8月ですが、その3年後、ナチスドイツはポーランドに侵攻しました。
第2次世界大戦の勃発です。今夏の祭典が終わってからの世界がどうなるか、
ベルリン後の世界のようにならないことを祈るしかありません。
公教育の破綻は国家の破綻を導きます。官に頼れないならば民が自立し、この国の根幹を支える責務を担わなければなりません。官が主導する教育の時代は
終わったのです。これからは民が主導すべきです。民間教育の自立を唱える
所以です。外国語教育もコンピューター教育も民が対応すべきです。文科省は
いっそのこと一旦解体すべきでしょう。しかし、民も拝金主義を排し、国を
支える気概を持つべきです。私利私欲の塊ではいけません。資本主義は自由な
経済活動によって利潤を追求しますが、それは良しとしても、それだけでは
社会そのものがいずれ崩壊します。社会的責任を自覚し、社会への還元という視点を持つべきでしょう。柔道を創設した嘉納治五郎は「自他共栄」の精神を
唱えましたが、これは全人類が心して実践すべき課題でしょう。
塾業界の現状はしかし、目標とはあまりにもかけ離れていることを認めないわけにはいきません。団体活動に参加している塾はわずか数%に過ぎず、4万とも5万とも言われている塾の全体を把握することもできていません。他の業界と
比較するのも愚かというべきでしょう。学習塾だけではなく、広く民間教育の
まとまりを模索する動きもありますが、まだ緒に就いたばかりです。
何よりも塾人の覚醒と協力が必要です。大手塾は大手塾なりに、中小塾は中小塾なりに、個人塾は個人塾なりに、方法は違っても志は一つにしなければなりません。気の遠くなるような道のりですが、塾がこの国の教育を支えるという
意思を共有し、その意思をもって業界としての団結をしなければ民が主導する
教育は不可能でしょう。

それこそ机上の空論です。
人材教育はこの国の喫緊の課題です。いかなる時代の波が押し寄せようとも
自ら考え、判断できる人材が必要なのです。語学やコンピューターの技術的能力だけではありません。人間や社会に対する深い洞察力や豊かな感受性も大切です。そのためには文学・歴史・哲学の素養も必要でしょう。世の中の流れに
柔軟に対応しながらも、正義と理想を見失わない人材が求められているのです。硬直化した官による教育は打破しなければなりません。今こそ民が立ち上がる時です。
官に左右されてはなりません。民がこの国の教育を主導し、官による公教育は
必要最小限にすべきです。民間における自由な教育こそが有為な人材を育成する絶対条件であり、自由な教育こそが市民社会を活性化し、その国の自立と繁栄を約束するのです。困難な課題であることは承知の上です。しかし、この国の教育の現状を憂え、あえてここに民間教育の自立を強く訴え、新年度を迎えての所感とします。

 

教育力を発揮する時

NPO塾全協東日本ブロック理事長 内藤潤司
(埼玉県狭山市 ソロモン総合学院)

 

2月の末に突然、携帯に教え子から電話がかかりました。「先生、3月25日塾の
創立記念日ですよね。今年は、44周年ですか、それとも45周年ですか」彼は、
二期生ですので、もう50歳を優に超えています。一年に何回か電話をくれ、今、
警視として某警察署の署長をしています。「なんで、創立記念日を知っているの」との問いに、「時々、ソロモンのホームページを見ているのですよ」という意外な答えに驚き。「何周年かを聞いたのは、言うとサプライズにならないのですが、ちょっとしった物を送りたいのです。」という返事に二度びっくり。塾を
卒業して、40年を過ぎるのに、忘れずにいてくれただけで十分なのに、ただ、ただ感謝の思いに心の中が熱いもので満たされました。
開塾して、塾が軌道に乗り、中学生のクラスが定員に達し、申込を断るようになった時、今の本館を建築致しました。このときに基本的な塾の形を決めました。
塾生の総定員数を決め、分教室を作らない。分教室を作らないという方針は、
何度もこれでいいのかと自問したものです。入会したいという人がいるのだから、受け入れてあげればと。
よく、大手塾に対して、中小「零細」塾と自虐的に言う方がいますが、私には、納得できません。多様な子供たちに対応し教育するために、生徒の数はとても重要です。何度も言いますが、何千人規模の民間教育機関があるのは、私の知る限りでは、韓国、台湾、中国、
そして日本です。ドイツ、イギリス、フランスには、ありません。イギリスの名門イートン校を数年前に訪問いたしましたが、一学年120名でした。長い伝統の中で培われた経験に
基づく規模なのでしょう。
今回のコロナウイルス騒動は、まだ終息しておりません。皆さんもご苦労なさっていることと思います。しかし、我々NPO塾全協の会員塾は規模が大きくない塾が多いので、大手よりも対応がしやすいのではないでしょうか。個別呼び出し指導、電話相談及び解説、素早い
オンラインの立ち上げなど細かな対応することにより、保護者と生徒の信頼を勝ち取れるものと確信しています。そして、NPO塾全協の役割は、情報と経験を共有して会員同士の信頼関係を深めるところにあると強く思います。


以上、一部抜粋

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です